物心ついた頃からLGBT、初めてのオフ会

LGBTであることの自覚

S君と一緒に帰った道中の楽しさを、今でも忘れることはありません。
普段絶対に口に出せなかったタイプの男性、夜の事情、カミングアウトするべきかの相談まで僕のすべてを話しました。
彼も家族にLBGTだと打ち明けるかどうかとても思い悩んでいて、僕らは後日またお茶でもしようとフワフワした気持ちのまま夜道で別れました。

そんな帰り道、事件は起きたのです。

僕が夜道を自宅へ向かって歩いていると、突然背後から男性の声で呼び止められました。人間とは不思議なことに、自分の名前を呼ばれると否応なしに反応してしまうものですね。
振り返ると、オフ会で出会った年上の大学生がこちらへ向かって歩いてきたのです。
彼は僕の肩に手をまわして「今からホテルへ行こう」と誘ってきました。
僕は途端に怖くなり、親が心配するから帰ると言いましたが、彼は放してくれません。とても力が強く強引に連れて行こうとする彼に恐怖しか覚えませんでした。
僕は必死に抵抗し、走って家へ帰りました。
帰宅してすぐS君にメールすると、僕を強引に連れて行こうとした彼はこの業界では手癖が悪く有名で、被害にあったLGBTの方もたくさんいると知りました。
この時僕は改めて自分がゲイであって相手も男性であること。力で勝てなければ犯罪めいたことにも巻き込まれる可能性があることを認識したのです。

10年後の現在

S君との交流は今でも続いています。

彼は上京して、今では新宿二丁目でゲイバーのキャストをしています。僕は仕事の都合で都内に行くことは少ないのですが、たまに休みが取れる時にはふらっと彼の店に通っています。
大人になって彼と話してみると、もうすっかり”おばさん”だねなんて冗談を言ったりもしますが、今思えばあのオフ会を経験していなければ彼と出会うこともなかったかと思うと、想像しただけで寂しくなりますね。
今はネット環境が普及して、以前よりもずっとLGBTの方々と交流することが簡単になりました。
メディア露出するLGBTの芸能人も増えて、日本でも広く認知されるようになってきましたが、携帯電話もネット環境もなかった時代には、ゲイバーはLGBTの方々が出会うことのできる唯一の場所だとも知りました。

今ではオフ会という名目でLGBTの集会に参加することはなくなりましたが、各所のLGBT系の飲み屋さんも観光バー化しているところも多く、LGBTの方々と触れ合いやすくなっています。
一度皆さんも僕たちのことを知るために訪れてみてください。

きっと新しい発見があると思います。