アメリカにおけるトランスジェンダー関連の動向

概要

近年、LGBTやトランスジェンダーといった言葉をメディアなどで聞くことが多くなりました。
特にアメリカなどの国際社会ではゲイやレズビアンだけでなく、トランスジェンダーと呼ばれる、身体と心の性が異なる人々の話題が取り上げられることが増えています。

そこで本記事では、アメリカにおけるトランスジェンダーに焦点を当て、トランスジェンダーに関する現地での動向や、今後どうしていくことが必要かについて考えます。

トランスジェンダーとは

トランスジェンダーは、性的少数者(セクシャルマイノリティ)を表すLGBTの分類の一つです。

LGBTとは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシャル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の略で、レズビアンは女性の同性愛者、ゲイは男性の同性愛者、バイセクシャルは恋愛対象が男性・女性両方の両性愛者です。
一方、トランスジェンダーは自分の性をどのように認識しているかという性自認において、身体の性は男性だが自認している性(心の性)は女性、または身体の性は女性だが心の性は男性というように、身体の性と心の性が一致しない人々を指します。

レズビアン、ゲイ、バイセクシャルはどの性別の人を恋愛対象とするかの性的指向を表すのに対し、トランスジェンダーは性自認を表すというのが特徴的です。
本記事で取り上げるトランスジェンダーは身体の性と心の性が異なるために、社会生活を送る上で様々な支障をきたし、日々生きづらさを感じる人々が数多くいるのが現状です。

アメリカにおけるLGBTの社会運動

1960年代当時、アメリカでは同性間で性行為をすることを禁じるソドミー法が施行されていました。
1969年、ゲイバーの「ストーンウォール・イン」で人気歌手の追悼式が行なわれていたところへ警察が捜査に入りました。
当時はゲイに対する偏見や警戒心が大きく、こうした抜き打ち捜査が入ることがしばしばありました。

追悼式の間に捜査されたことから大きな反乱事件となったのですが、この事件をきっかけに、アメリカでLGBTの社会運動が広まったといわれています。
以後、アメリカの各地でソドミー法が廃止され、同性愛者に対して雇用差別を行なうことを禁止する法律ができるなど、トランスジェンダーを含むLGBTへの理解が少しずつ進んでいきます。

米軍のトランスジェンダー受け入れについての動向

ここからは、アメリカにおけるトランスジェンダーに関する動向について見ていきます。

2016年、オバマ前政権は、それまで認められていなかったトランスジェンダーの米軍への入隊を認める方針を決定しました。
しかし、トランプ政権は2019年、トランスジェンダーの受け入れには医学的コストがかかること、また現場が混乱することを理由として、トランスジェンダーが入隊することを原則として禁止し、出生時の性別で入隊することを義務づける指示を出しました。
これにより、2016年時点で約9千人いたトランスジェンダーの米兵が相次ぎ除隊する事態となり、2019年時点での在籍者は約1千人にまで減少しました。