トランスジェンダーの就職活動のポイント

パス度はどこまで求められるのか

トランスジェンダーの就職活動について、まず気になるのが「パス度はどこまで求められるのか」ということです。
パス度とは、「自分が認識している性自認が、第三者から外見上認識されているかどうかを示す指数」のことです。
これは、あるに越したことはありませんが、多くのトランスジェンダー当事者が思う「自分が女性に見えるかどうか不安」「確実に女性に見られるまでは就職活動はしない」という所までのこだわりは不要でしょう。
トランスジェンダーの人たち、中でも完成度が高い人ほど、120%の女性像を求めるので、当事者間で純粋な女性だと思われるのが最も困難なのです。
もちろん、元男性だと分かったとしても、「キレイだ」「清潔感がある」といったイメージが浮かぶ容姿は必要になってきます。
しかし、それはトランスジェンダーに限ったことではありません。
それよりも、現実には男性と同じくらいハスキーな声の女性もいるので、男性味をすべて消去する必要はないでしょう。
簡単にいえば、不安があっても下を向かず、自信を持って受け答えすることが大事だということです。
これは、元女性のトランスジェンダーにも同じことがいえます。

学歴やスキルは要るのか

MtFトランスジェンダーの場合は、大きく二極化しています。
高学歴で職歴やスキルが優れている場合と、引きこもっており中学や高校の時点から社会との接点が少ないという場合の二つです。
採用する側としては、学歴も食歴もなくても100点の人はいるし、高学歴で職歴があっても0点の人もいるので、短時間で見抜くのは簡単ではありません。
そのため、当たりを引くよりも、外れを引かないことを重視しています。
つまり、「何かを頑張った経験がある人のほうが、外れが少ない」という見方をしています。
しかし、このような自分磨きというのは、「武器の一つ」にはなりますが、あくまでも「武器の一つ」だということを忘れてはいけません。
結局のところ、自分のよさを出せるかどうかは環境によるところが大きいからです。
ですから、採用する側は対話能力や協調性を重視します。
さらにいえば、スキルがなくても、またフルタイムではなくても、働ける場というのはたくさんあります。
例えば、学校の非常勤講師や、タクシードライバーなど。
そのため、OLだけが選択肢ではないということは、念頭に置いておいたほうがよいでしょう。

就職活動時のメイクやファッションは伝統に則るべきか

トランスジェンダーの当事者にとって、メイクやファッションが制限されるというのは重大な問題です。
それは、容姿のパス度を技術でカバーしていた場合、「とられる」ことになってしまうからです。
しかし、これに関しては、今は時代が味方しているといえます。
現在は、「就活メイクの基礎」を教えている所よりも、「メイクの基礎」「スキンケアの基礎」を教えている所のほうが多くなっています。
例えば、「リップはベージュの物にする」「髪はひっつめで」などといった指導をしている所は、ほとんどありません。
それよりも、「自分らしさをいかに出すべきか」といったことを主に指導しています。
こういったことを考慮すると、重要なのは「メンタル」だといえます。
トランスジェンダーに限ったことではありませんが、就職活動は基本的に負け戦が連続します。
そのため、「落とされてもともと」「経験を積むことができた」というくらいに構えておくべきです。
例えば、プロ野球なら10勝10敗でも年俸が1億円くらい貰えるわけです。
ですから、1勝1敗ならOKというくらいに考えておけば、気が楽になるでしょう。
就職活動の際は、こういったことを踏まえて臨んでください。