LGBTの子どもを持つ家族の問題

同性愛者としての自覚が芽生える時期とは?

同性愛者としての性的指向は生まれつきのものなのか、それとも後天的に身に着けるものなのかについては、長年の議論が続いていますが、ほとんどの方々は、いわゆる異性を意識するようになると言われている、小学生中学年から高学年頃に、周囲が異性に対して盛り上がっている際、どうにもその空気に馴染めない体験をする中で、自分の性的指向を自覚するようになると言われています。
同性愛に対する理解が一般的になってきた時代に知識として知っておくべきことは、幼少期から思春期に至る過程において、同性に対する憧れのような感情を持つことは珍しくないという点です。
そのような憧れの感情を持ち続ける中で、「自分は世間で言われているような、同性愛者なのかもしれない」と思い込んでいき、逆に自分の本来の性的指向とは違う指向を持つようになる方々も一定数いると考えられています。
また、アメリカにおける継続的な調査により、家庭において性的虐待を受けた家庭に育った子どもは、より同性愛者としての性的指向を持つことが多いということがわかりました。
例を一つ上げますと、父親から性的虐待を受けた女の子は、男性という存在に絶望と恐怖を感じ、同性に慰めを求める、というものです。
また、母親から虐待され、育児放棄されるなかで成長した男の子は、女性という存在に絶望し、同性にしか安心を見いだせない、というパターンも存在します。
 このように、同性愛者と呼ばれる方々の中には、思い込みや成育歴によって身に着けてしまった指向を持ち、自分の混乱した性と心を抱えたまま、苦悩の内に生きているというケースがあるのです。
もしかしたらそれは本来、味わう必要がない苦悩であるはずなのです。

家族の責任

そう考えていく時に、家庭というものは子どもの性と心を育む上で非常に重要な要素であることが見えてきます。
子どもが同性愛者であることを告白しても、それを受け入れ、その後どのように歩んでいくかを共に考えることができる家族。
子どもが混乱した性的指向を持つことがないように、健全で、愛情にあふれ、きちんとしたしつけと対話がなされている家族。
そのような家族の中で、子どもは安心して成長していくことができます。
かつてアメリカでは、同性愛者であることを告白した子どもを、強引にカウンセリングに連れていくことがありました。
そして、子どもはその中で、自分は不健全で、汚れた存在であると責められていると感じました。
中には自殺にまで追い込まれた子どももいたのです。
もし、家族が責めるのではなく、まず受け入れ、対話する道を選んでいたら、どうだったでしょう。
それまでの子育てを反省し、子どもの心にある叫びに耳を傾けることができていたら、そのような悲劇は避けられたかもしれません。
 同性愛者であるか、ないかを超えて、健全な家族を形成していくことが、すべての人が安心して暮らせる社会の土台ではないでしょうか。