裏桜木町・野毛【LGBTに優しい街】
桜木町で会いましょう
数年前の8月のことです。Tさんから「今度野毛で一緒に飲まない?」とSNSで誘われました。
野毛?…まったく知らない名前だったのでスマホで調べると、東京からは京浜東北線に乗って横浜駅の次の駅、桜木町駅近くの地名ということが分かりました。
ここで簡単に、自己紹介ならびに状況のご説明をさせてください。
私は会社員で、Tさんとは仕事で年単位の付き合いがあります。
年齢・性別は、この文章の主旨に則り「些末なこと」とさせてください。
一方のTさんは会社の社長さんで、私は平素からお世話になり、また慕っておりました。
Tさんは「些末なこと」を除いても、多芸・多趣味の才人で、お会いするたびに興味深いお話をしてくださり、その豊富な話題のひとつに、ご自身の性的趣向にまつわることもありました。
私はお酒は飲めないので、Tさんのお誘いを断ることはない一方、いわゆる「暖簾をくぐる」経験は、今に至るまで、人の後ろについてしかありません。
この日も、午後6時には会議を終えて野毛に着くというTさんとの「約束」に間に合うよう、その2時間前には桜木町駅の改札を出ていました。
目の前に、巨大なランドマークタワーがそびえ立っています。
決して初めての街ではありません。
時間もあるので海の方へと歩き、潮風に当たり、午後5時くらいにはいつTさんからの連絡があってもいいように、それまで足を踏み入れたことのない、「駅の反対側」へと向かいました。
Tさんから次の連絡があったのは、約束の時間を30分ほど過ぎたころ。
「7時くらいになりそう」というショートメールでした。
それから紆余曲折あり、8時に数分間に合ったくらいに、「○○ビルの前の交差点の歩道の手前」にいるからと電話で言われ、すぐに向かうとちょうどTさんがタクシーを降りるところでした。
異性装をしていましたが、普段どおりの声と話し方、そして体格ですぐにTさんと分かりました。
そのとき少しだけ驚いたのはむしろ、タクシーの運転手さんの、あまりに普通かつプロフェッショナルな対応に、でした。
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