漫画から学ぶトランスジェンダー

トランスジェンダーの金字塔

トランスジェンダー、それは主に生まれたときの性と、自身が認識する性に差がある人を指します。
しかし、世の中にはその認識さえも超えている漫画作品が、いくつもあったのでした。
最近もトランスジェンダーを扱う作品は多く発表されていますが、
トランスジェンダーという言葉さえまだ珍しい頃に描かれた金字塔的作品があります。
初連載時が2005年という今から15年近く前の、新井祥先生の「性別が、ない!」です。
「性別が、ない!」は、新井祥先生自身が女性として生まれ育ち、
後に男性として生活する日々を赤裸々に漫画にしたものです。
女性として生活している中で、自身の身体の変化(時折髭が生えたり陰核が肥大化するなど)に気づいて、自身の性別について考える場面があります。
とてもびっくりしたり、人によっては嫌悪感を感じるような自身の身体に起こる変化を、さっぱりと淡々と現実的に受け止めていきます。
自身のジェンダーに悩んでいる方には、とても気持ちが慰められる場面が多々あります。

また、悪気無く性別の持つ役割を押し付けるおばあちゃんや、身内などの心無い言葉も出てくることで、
トランスジェンダーの生きにくさを表している真面目な部分もあります。
嫌味にならないように、読みやすさに配慮されていますが、トランスジェンダーの悩みにも触れられています。
デフォルメはあるでしょうが、自身や周りの人の話だと思うと、とても参考になります。
読み物としても面白く、全く悩まずに思い付きで性転換してしまう(ように見える)人や、
個性的な奇抜な人が多数登場するので、別世界のような新世界も体験できます。
漫画なので、生生しくなりすぎずにトランスジェンダーを知れる、教科書のような存在です。

新井祥先生は、女性として男性と結婚して、男性としての身体的特徴を強めた後、円満に離婚をされて、その後も元旦那さんとは仕事上のパートナーとして、良好な関係を築いていらっしゃいます。
そのあたりの人間性の深さや、周りの方との関係に、トランスジェンダーとしてみた人生だけではなくとも羨ましくなります。